2017年1月10日火曜日

FALCON試験〜ホルモン受容体陽性進行乳癌に対するフルベストラントとアナストロゾールの多施設ランダム化比較試験〜

Robertson JF, Bondarenko IM, Trishkina E, et al. Fulvestrant 500 mg versus anastrozole 1 mg for hormone receptor-positive advanced breast cancer (FALCON): an international, randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet. 2017;388(10063):2997-3005.

PMID: 27908454

【背景】
ホルモン受容体陽性の進行乳癌や転移性乳癌に対して,アロマターゼ阻害薬は標準治療として用いられている.
ホルモン療法を受けていない閉経後の乳がん患者に対して,我々はフルベストラント(SERD; Selective Estrogen Receptor Degrager)が無増悪生存期間を改善させるか検討した.

【方法】
この第III相ランダム化比較試験(二重盲検法)において,組織学的にエストロゲン受容体陽性,プロゲステロン受容体陽性,あるいはその両者,と診断された局所進行あるいは転移性乳癌の患者を20ヶ国113施設(大学病院,市中医療センター)から集めた.
研究に参加した被験者はホルモン療法未加療,WHO基準でPS 0-2,少なくとも1つの病変を持つ(測定可能でも不可能でも)の条件を満たした.
患者はコンピュータ生成ランダム化装置により,フルベストラント群(500 mg 筋注をday 0, day 14, day 28, その後28日ごと)とアナストロゾール群(1 mg経口を毎日)に1:1でランダムに割り付けられた.
Primary end point は①「固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン(RECISTガイドライン)1.1版」で定められた無増悪生存期間,②病勢悪化に対する手術または放射線療法による治療,③全死因死亡とし,ITT解析を行った.
安全性の評価は全患者に対してランダム化治療を1回受けた後に行った(プラセボ含む).
本試験はClinicalTrials.govに登録されている(登録番号NCT01602380).

【結果】
2012年10月17日から2014年7月11日まで,524人の患者が本試験に登録された.
そのうち,462人の患者がランダムに割り付けられた(フルベストラント群230人,アナストロゾール群232人).
無増悪生存期間はフルベストラント群で有意に長かった(HR 0.797,95%信頼区間 0.637-0.999,p=0.0486).
無増悪生存期間の中央値はフルベストラント群で16.6ヶ月(13.83-20.99ヶ月),アナストロゾール群で13.8ヶ月(11.99-16.59ヶ月)だった.
最もよく見られた有害事象は関節痛(フルベストラント群で38人(17%),アナストロゾール群で24人(10%))と顔面紅潮(フルベストラント群で26人(11%),アナストロゾール群で24人(10%))だった.
フルベストラント群のうち228人中16人(7%)とアナストロゾール群232人中11人(5%)が有害事象のため治療を中止した.

【結論】
ホルモン受容体陽性の局所進行あるいは転移性乳癌患者への初期治療として,現在の標準治療である第三世代アロマターゼ阻害薬に比してフルベストラントは優位な効果を示し,望ましい治療選択と言える.

【用語解説】
フルベストラント:選択的エストロゲン受容体抑制薬(SERD)

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